木造毘沙門天立像

彫第7号
1.部門
彫刻
2.所在地
愛荘町松尾寺 金剛輪寺(華楽坊)
3.所有者
金剛輪寺 代表役員 住職 濱中 光礼
4.時代
平安時代(平安後期)

5.内容
現在は金剛輪寺華楽坊に安置されている。かつては本堂に安置されていたが、近年に移された。作風を見ると、全体にしっかりとした肉どりで表されており、平安時代中期の重量感が残る。特に、なで肩ですっとした肩のラインを示すのは、11世紀後半の作といわれる浄瑠璃寺(京都府)四天王像のうち多聞天像があげられるが、本像の静かで控えめな動きや腰の高さなども同像と近い感覚をもつ。一方、本像の裳は浄瑠璃寺像に比べると長めで、これは12世紀によく見られる表現である。表面の彫りも浅くなっており、穏やかな顔の表現も時代が下る感じを与える。よって本像の制作年代は、11世紀末から12世紀前半頃と考えられる。また、左手に宝塔を持ち、右手を腰に当てる姿勢は『聖無動尊安鎮家国等法』にある図像であるが、実際の彫刻、毘沙門天としては実はほとんど類例を見ない珍しい図像的特色である。類例としては独尊ではないが、神宮寺(三重県)の二天像のうち多聞天像に見られる程度であり、今後はその図像解析や類例探索も含めて注意されるべきであろう。本像は、都ぶりな作風をもち、独特の図像をもつ院政期の毘沙門天像として価値が高い。
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更新日:2019年12月25日