紙本著色矢取地蔵縁起絵巻
愛荘町立歴史文化博物館寄託
1.部門
絵画(絵第1号)
2.名称
紙本著色矢取地蔵縁起絵巻
3.所在地
愛荘町立博物館寄託
4.制作年
室町時代(享徳2年〈1453〉)
5.品質構造
紙本著色、巻子装
6.法量
- 見返し 27.1センチメートル
- 本紙
- 縦 34.1センチメートル
- 横 614.4センチメートル
- 第1紙 54.6センチメートル 内題/詞
- 第2紙 51.6センチメートル 詞/絵
- 第3紙 51.4センチメートル 絵
- 第4紙 51.5センチメートル 絵
- 第5紙 51.6センチメートル 絵
- 第6紙 51.6センチメートル 絵
- 第7紙 51.6センチメートル 絵
- 第8紙 51.6センチメートル 絵
- 第9紙 51.3センチメートル 詞/絵
- 第10紙 51.6センチメートル 絵
- 第11紙 51.3センチメートル 絵
- 第12紙 44.7センチメートル 奥書
7.現状
ほぼ良好。後世の好ましくない補彩・補筆などはほとんどなく、画面は概ね当初の状態を伝える。ただ、折皺が若干認められ、経年変化もあり表具裏打ち紙の強度はかなり劣化してきているため、今後ここから亀裂など画面の損傷を導くおそれがある。また、表紙や見返し部分も経年による劣化が認められ、修復を前提とする保護策を講じる必要がある。
8.内容
『今昔物語』巻17や、『地蔵菩薩三国霊験記』巻6をはじめとする数種の地蔵霊験説話集所載の、「近江國依智郡賀野村地蔵菩薩像」にまつわる説話を母胎とする内容を示す。信仰する氏寺本尊の地蔵尊が合戦の場に出現して戦勝に導くという霊験奇譚を、隣郷との用水争論という歴史的事実にからめつつ話は展開する。
構成は、詞・絵・詞・絵・華厳経偈を引用した奥書からなる。絵と詞を別々の料紙とはせずに、詞を筆写し続いてその内容の絵を描くという方式をとる。
全体的に色彩が淡く、やや稚拙で素朴な画趣をもち、室町時代の絵巻物が特色とする一面をよく伝えている。一方、人物描写は濃彩で精緻であり、面貌表現も類型化せず、各人固有の表情が見てとれる。本絵巻制作のもう少し後に活躍する土佐光信の前段階にある土佐派絵師による制作が想定されよう。
なお、奥書には
「仍金臺寺昔縁起紛失之間今尋此本
命畫師以奉寄進也
源朝臣高春(花押)
享徳貳年癸酉十一月廿四日」
とあって、制作年代や寄進者名が明らかで、この時代の基準作例の一つに数えられる。寄進者源朝臣高春は、『碧山日録』(東福寺禅僧太極蔵主の日記、応仁年間)にもっとも多く登場する俗人である「春公」(鞍智高春…佐々木 源氏の支流であり、室町幕府直臣)とみる説が有力である。














この記事に関するお問い合わせ先
歴史文化博物館
〒529-1202
滋賀県愛知郡愛荘町松尾寺878番地
電話番号:0749-37-4500
ファックス:0749-37-4520
メールフォームによるお問い合わせ
更新日:2019年12月25日